かつて「SM女王様キャラ」で一世を風靡した芸人、西岡すみこさん。あの頃の姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。しかし、現在の彼女は全く違う顔を見せています。人気タレントの東野幸治さんとの対談で明かされたのは、認知症の母、ダウン症の姉、そして酔っ払いの父との、壮絶ながらもどこか愛おしい介護の日常でした。この記事では、彼女が語ったリアルな介護生活と、その中で見出した力強い生き方に迫ります。
【この記事から得られる勇気】
介護という重いテーマに、真正面から、そして正直に向き合う西岡さんの姿は、同じような悩みを抱える人々に大きな勇気とヒントを与えてくれます。「完璧じゃなくていい」「自分の幸せを第一に考える」という彼女のメッセージは、きっとあなたの心を少し軽くしてくれるはずです。
【見どころ5段階評価】
- 壮絶な介護エピソードのリアル度:★★★★★
- ユーモアで乗り切る家族の日常:★★★★☆
- 明日への活力が湧く心の持ちよう:★★★★★
あの「女王様」は今…衝撃の近況報告
東野幸治さんが「今日は西岡すみこさんを深掘りします」と切り出した対談。多くの人が思い浮かべるのは、あの鞭を持った女王様の姿でしょう。しかし、西岡さんの口から語られたのは、私たちの想像をはるかに超える現在の生活でした。
突然の告白「家族構成は…」
西岡さんは2020年、コロナ禍をきっかけに実家へ戻り、そこから現在の生活が始まりました。彼女が出版した著書のタイトルは『ぽんこつ一家』。その名の通り、彼女は自身の家族構成をこう紹介します。
「母が認知症で、姉がダウン症で、父が酔っ払いで、私が一発屋っていうので…」
この衝撃的な自己紹介から、彼女のリアルな日常が語られ始めます。朝は5時に起床。それはお母様が起きる時間だから。そして、家族3人分の朝昼晩、合計9食分の食事を作り置きすることから彼女の1日はスタートするのです。想像するだけで、その大変さが伝わってきますよね。
【豆知識】一発屋という強み: 西岡さんは自らを「一発屋」と称しますが、これは誰もが知る強烈なキャラクターがあるということの裏返しでもあります。この知名度と経験が、現在の情報発信において大きな力になっていることは間違いありません。
笑いと涙と、時々ロック。リアルすぎる介護エピソード
彼女が語る介護の日常は、決して綺麗事だけではありません。しかし、そこには思わず笑ってしまうようなユーモアと、胸が締め付けられるような切実さが混在しています。いくつか象徴的なエピソードをご紹介しましょう。
おトイレそうじ問題:犯人は深夜に忍び込むナゾのおじさん!?
ある日、トイレの横に誰のものか分からないブツが…。家族に聞いても、誰もが「自分じゃない」と主張します。特に、お母様はお姉様をかばうあまり、とんでもないストーリーを創作し始めます。
「夜中に知らないおじさんが忍び込んで、うちのトイレで用を足してこっそり帰ったんだ」
そんな変態いるわけないじゃないですか!と心でツッコミながらも、結局そのブツを片付けるのは西岡さん。「誰がやったか、なんてどうでもいいんです。結局片付けるのは私なんだっていう、この何とも言えない気持ち…」と語る彼女の言葉に、多くの介護経験者が頷くのではないでしょうか。
送り付け詐欺事件:しっかり者だった母が流した涙
ある日、お母様が5,500円の送り付け詐欺に遭ってしまいます。頼んでもいないトリートメントが着払いで届いたのです。お金は無事に戻ってきたものの、この一件がお母様の心に大きな影を落とします。
元々とてもしっかりした人だっただけに、「騙された」という事実がショックで、あらゆる人を疑うようになってしまったのです。その結果、正規の宅配業者の方を詐欺師と勘違いし、大揉めする事態に…。
その夜、仕事から帰宅した西岡さんが見たのは、暗い玄関で座り込むお母様の姿でした。「誰が怪しくて、誰が怪しくないのか分からない…」。自分の判断力に自信をなくし、堰を切ったように泣き出したお母様の姿を見て、西岡さんは「元気じゃない母を見ることが、私もやっぱりショックだった」と、これまでで一番ショックな出来事だったと振り返ります。これは、介護する側だけでなく、される側の葛藤や尊厳にも光を当てる、非常に考えさせられるエピソードです。
すみ子問題:「娘の名前、なんだっけ?」
お母様が風邪薬の飲み過ぎで朦朧としてしまった時のこと。意識がはっきりしない中で、お母様は西岡さんに向かってこう言ったのです。
「もう一人娘がいるんだけど…そうそう、すみ子。そのすみ子に『孫はまだか』って言うとショック受けるから、言わないであげてね」
目の前にいる本人に向かって、第三者のように語りかけるお母様。一瞬、自分の名前を忘れられてしまったのかという恐怖。幸い、これは薬の作用による一時的なもので、認知症の進行ではありませんでした。しかし、このまま本当に忘れられてしまったらどうしよう、という不安は、彼女の心に重くのしかかったことでしょう。この話を聞いた東野さんが「おかんあるあるやな」と自分の母親のエピソードを語り、場を和ませたのも印象的でした。
【豆知識】地域包括支援センターとは?: 西岡さんも名前を知らなかったという「地域包括支援センター」。ここは高齢者の介護、福祉、医療など、様々な悩みの相談に乗ってくれる公的な窓口です。「どこに相談したらいいか分からない」という時に、まず最初に頼れる心強い味方なので、ぜひ覚えておきましょう。
芸人・西岡すみこの葛藤と覚悟
介護生活の裏側には、一人の芸人としての葛藤も存在します。
SMキャラ、本当はやめたかった?
対談では、SM女王様キャラで活躍していた当時の心境にも触れられました。実は、キャラクターの晩年は「もうやめたい」と思っていた時期があったそうです。東野さんが聞いた話では、周りの芸人たちは「あと2年辛抱してやれば、自然と違う形に移行できるのに」と見ていたとのこと。
しかし、西岡さんは「その2年が我慢できない」と感じていました。キャラクターを脱いだところで、トークスキルに絶対的な自信があったわけではない。一つの武器を失うことへの恐怖と、先輩方に悪態をつき続けることへの精神的な疲労。その狭間で揺れ動いていたのです。この葛藤があったからこそ、今の彼女の言葉には深みがあるのかもしれません。
「いつでも逃げる」―それが最強の介護マインド
これほど壮絶な毎日を送りながら、彼女はどうやって心のバランスを保っているのでしょうか。その秘訣は、意外なほどシンプルで、しかし非常に力強い言葉に集約されていました。
「私は私の人生を第一に考えてるんです。だから、もうダメだと思ったら、逃げるのも選択肢の一つだと思ってます」
この言葉に、東野さんも「なるほどな!」と深く頷きます。「親の面倒を見るのは当たり前」「施設に預けるのは親不孝だ」といった固定観念に縛られ、自分を追い詰めてしまう人は少なくありません。しかし、介護は終わりが見えない長距離走です。共倒れになってしまっては元も子もありません。
「いつでも逃げていい」という選択肢を心に持っておくこと。それは、自分自身を守り、結果的に長くサポートを続けるための、最も現実的で賢い「覚悟」なのかもしれません。
西岡すみこが教えてくれた、愛と強さの形
西岡すみこさんが語ってくれた『ぽんこつ一家』の物語は、決して他人事ではありません。家族の介護は、いつ誰の身に降りかかってもおかしくないテーマです。
彼女の体験談は、私たちに多くのことを教えてくれます。
- 完璧を目指さないこと:すべてを一人で抱え込まず、うまくいかないことがあっても自分を責めない。
- 自分の人生を大切にすること:「逃げる」という選択肢を持ち、自分自身の心と体の健康を最優先する。
- 助けを求めることを恐れないこと:地域包括支援センターのような専門機関を頼り、情報を集める。
東野さんが「講演会をやった方がいい」と勧めたように、彼女のリアルな言葉は、今まさに介護で悩んでいる多くの人々にとって、何よりの処方箋になるはずです。女王様の鞭を置いた今、彼女は言葉という新たな武器で、私たちに勇気と希望を与えてくれています。
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