「ゆっくりしていってね!」 今回のテーマは、海外SFドラマのまさに原点にして頂点とも言える不朽の名作、『スタートレック』(オリジナルシリーズ、通称TOS)です! 1960年代に放送され、一度は打ち切りになりながらも、熱狂的なファン(トレッキー/トレッカー)に支えられ、今なお新たなシリーズが作られ続ける…まさに伝説! 宇宙船USSエンタープライズ号が繰り広げる未知への冒険、カーク船長やミスター・スポックといった魅力的なキャラクター、そして未来への希望に満ちた世界観は、半世紀以上経った今でも色褪せません。この記事では、そんな『スタートレック TOS』の魅力を、動画の解説をもとにたっぷりお届けします!
『スタートレック TOS』とは? – 打ち切りから伝説へ
『スタートレック』(Star Trek: The Original Series, TOS)は、アメリカで1966年から1969年にかけて全79話が放送されたSFテレビドラマシリーズです。日本では『宇宙大作戦』や『宇宙パトロール』といった邦題で、1969年から放送されました。今では考えられないかもしれませんが、放送当時は視聴率が振るわず、ファンからの熱心な嘆願運動があったにも関わらず、シーズン3で打ち切りとなってしまったのです…。
時代を先取りしすぎた? 低視聴率からの復活劇
「えっ、打ち切り!? じゃあ失敗作だったの?」と思ってしまいますよね。ところがどっこい! 1969年のアポロ11号月面着陸成功など、現実の宇宙開発が進むにつれて人々の宇宙への関心が高まり、その後の再放送で人気が爆発! カルト的な人気を獲得し、後のシリーズや映画へと繋がる、まさに「伝説」の始まりとなったのです。今では「時代を先取りしすぎていた」「放送が早すぎた」と評価される、SFドラマ史における重要な作品なんですよ。
舞台は23世紀!希望に満ちた未来の世界観
『スタートレック』の舞台は、今から約200年後の23世紀。この時代の地球は、驚くほど理想的な社会を実現しています。
貧困・戦争・差別を克服した地球
なんと23世紀の地球では、国家間の対立はなくなり「地球連合」として統一。貧困や戦争といった争いごとは過去のものとなり、さらには人種や性別など、見た目や無知からくる偏見・差別も完全に克服されているんです! すごいですよね! しかも、お金(貨幣経済)も存在せず、人々は富や欲望のためではなく、人間性の向上や自己実現のために働いている…まさにユートピア! こんな未来が本当に来たら素晴らしいと思いませんか?
広大な宇宙へ!惑星連邦と未知への探求
そんな理想郷となった地球は、様々な異星文明と交流し、「惑星連邦(United Federation of Planets)」という銀河規模の共同体を形成しています。ドラマの主役となる宇宙船USSエンタープライズ号(NCC-1701)は、惑星連邦の宇宙艦隊「スターフリート」に所属し、「人類未踏の宇宙の探求、新しい生命と文明の発見」を主な任務として、広大な銀河系(まだ人類が進出しているのは全体の約4分の1!)を旅しているのです。その旅のコンセプトは、制作当時の人気ジャンルだった「西部劇」。未知の世界を開拓していくスピリットは、宇宙が舞台になっても変わらないんですね!
個性豊かなクルーたち!エンタープライズ号の仲間たち
『スタートレック』の大きな魅力は、なんといってもエンタープライズ号に乗る個性豊かなクルーたち! 彼らの織りなす人間ドラマ(異星人含む!)が、物語の核となっています。
リーダーシップの塊!ジェームズ・T・カーク船長
エンタープライズ号を率いるのは、ジェームズ・タイベリアス・カーク船長(演:ウィリアム・シャトナー)。時には強引とも言えるほどの強いリーダーシップと行動力で、困難な状況を切り抜けていく、まさに頼れるキャプテン! 女性にもモテる(笑)。ミドルネームの「T」が「タイベリアス」(古代ローマ皇帝ティベリウスのこと)だと判明した時は、ファンも盛り上がったとか。
論理と冷静、そして友情!ミスター・スポック副長
そして、『スタートレック』の顔と言えばこの人! ミスター・スポック(演:レナード・ニモイ)。尖った耳と特徴的な眉毛を持つ彼は、論理と理性を重んじるバルカン星人の父と、地球人の母を持つハーフです。副長兼科学士官として、常に冷静沈着。感情的な判断を嫌い、カーク船長に「船長、それは非論理的です(Highly illogical.)」と進言することもしばしば。人間味あふれるドクター・マッコイとはしょっちゅう口論していますが(笑)、カーク船長を含めた3人の間には、種族を超えた固い友情が確かに存在します。このスポックの人気が、シリーズ全体の成功を支えたと言っても過言ではありません!
【豆知識】バルカン・サイン: 人差し指と中指、薬指と小指をそれぞれくっつけ、中指と薬指の間を開く、あの独特な指のポーズ! スポック(バルカン人)の挨拶で、「長寿と繁栄を(Live long and prosper.)」という言葉と共に使われます。ファンならぜひマスターしたいところですが、意外と難しいんですよね、これが!
人間味あふれる船医!ドクター・マッコイ(ボーンズ)
カーク船長の親友であり、船の医療を一手に担うのが、ドクター・レナード・マッコイ(演:デフォレスト・ケリー)。愛称は「ボーンズ」。感情豊かで、時には皮肉屋、でも誰よりもクルーの身を案じる、人間味あふれる人物です。論理優先のスポックとは正反対のタイプで、二人の掛け合いはシリーズの名物の一つとなっています。「私は医者だ、○○じゃない!」(I’m a doctor, not a ○○!)というセリフも有名ですね。
多様性の象徴!ウフーラ、スールー、チェコフたち
エンタープライズ号のブリッジ(艦橋)には、他にも魅力的なクルーがたくさん!
- ウフーラ中尉(演:ニシェル・ニコルズ): アフリカ系の女性通信士。その存在自体が、放送当時のアメリカ社会において画期的でした。
- ヒカル・スールー中尉(演:ジョージ・タケイ): アジア系の操舵士。演じたジョージ・タケイ氏は日系二世で、後に日米の文化交流にも貢献されました。
- パヴェル・チェコフ少尉(演:ウォルター・ケーニッヒ): ロシア人の航海士。シーズン2から登場。
- モンゴメリー・スコット少佐(スコッティ)(演:ジェームズ・ドゥーアン): スコットランド訛りの陽気な機関主任。「転送(ビーム)してくれ、スコッティ!(Beam me up, Scotty!)」は有名なフレーズですが、実は劇中でカーク船長が全く同じセリフを言ったことはないのだとか…?
このように、人種や性別、出身地も様々なクルーが、それぞれの能力を発揮し、協力して困難に立ち向かう姿は、まさに『スタートレック』が描く多様性と協調の理想を体現していました。1960年代にこれだけの多様性を実現していたのは、本当に驚くべきことです!
未来へのメッセージと知られざるエピソード
『スタートレック TOS』は、単なるSF冒険活劇ではありません。その根底には、制作者たちの未来への強いメッセージが込められていました。
制作者ジーン・ロッデンベリーの理想
シリーズの生みの親であるジーン・ロッデンベリーは、『ガリバー旅行記』や映画『禁断の惑星』、そしてテレビ西部劇などから着想を得て、『スタートレック』の世界を構想しました。宇宙という舞台を借りて、人種差別、戦争、冷戦といった当時の社会問題を巧みに描き出し、人類が進むべき未来の姿を提示しようとしたのです。その楽観的とも言える未来への希望が、多くの人々を魅了しました。
キング牧師もファンだった!?ウフーラ役の歴史的意義
ウフーラ役のニシェル・ニコルズさんには、こんな感動的なエピソードがあります。彼女はシリーズの途中で降板を考えていたそうですが、あるパーティーで一人の熱心なファンに引き止められます。そのファンとは、なんとマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師! キング牧師は「『スタートレック』は、私の子供たちに寝る時間を遅らせてでも見ていいと許した唯一の番組だ」と語り、「あなたは歴史の一部だ。やめてはいけない」とニコルズさんを説得したのです。
なぜキング牧師はそこまで言ったのか? 当時のアメリカのテレビドラマでは、アフリカ系女性の役柄はメイドなどがほとんどでした。しかし、『スタートレック』では、ウフーラは宇宙船の重要な役職である通信士として活躍していたのです。その姿は、多くのアフリカ系アメリカ人、特に女性たちに大きな勇気と希望を与えました。後にアカデミー賞女優となるウーピー・ゴールドバーグさんも、子供の頃にウフーラを見て女優を志した一人だと言われています。一人のキャラクターが、現実社会にこれほど大きな影響を与えたというのは、本当にすごいことですよね!
スポックとニモイのユーモア
スポック役のレナード・ニモイさんは、役柄同様、非常に知的で落ち着いた紳士だったそうですが、ユーモアも持ち合わせていました。あるインタビューでは、「このドラマは哲学的で奥が深いんだ」と熱く語っている最中に、スタッフから「ニモイさん、怪獣との格闘シーンの出番ですよ!」と呼ばれた、なんて自虐的なエピソードを披露しています(笑)。また、90年代に屋外で携帯電話を使っていたら、通行人から「あー!ミスター・スポックがコミュニケーター(劇中の通信機)を使ってる!」と言われたとか。時代がドラマに追いついてきた瞬間ですね! 科学者ファンから専門的な質問をされて困惑した、なんて話もあったそうです。
終わらない旅路:『スタートレック』ユニバースの広がり
『スタートレック TOS』は打ち切りで終わりましたが、物語は決してそこでは終わりませんでした。むしろ、そこからが新たな始まりだったのです!
ファンダムの熱狂:「トレッキー」誕生とコンベンション
打ち切り後もファンの熱意は冷めやらず、1972年にはニューヨークで大規模なファンコンベンション(ファンの集い)が開催されました。主催者の予想を遥かに超える数千人が集まり、消防車が出動する騒ぎになったとか! これが、今なお世界中で開催されているスタートレック・コンベンションの記念すべき第1回目とされています。熱心なファンは「トレッキー」または「トレッカー」と呼ばれ、独自のコミュニティを形成していくことになります。
【用語解説】トレッキー/トレッカー: スタートレックの熱心なファンのこと。「トレッキー」は時に熱狂的すぎるファンを指すニュアンスで使われることもあり、「トレッカー」という呼称を好むファンもいます。
スクリーンへ、そして新世代へ
ファンの熱意と、1970年代後半のSF映画ブーム(『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』など)が後押しとなり、『スタートレック』はついに劇場版映画として復活! 1979年の第1作目を皮切りに、オリジナルキャストによる映画が計6作品製作され、人気を博しました。
さらに、テレビの世界でも新たな世代が活躍を開始! 1987年からは、全く新しいキャストによるTVシリーズ『新スタートレック』(Star Trek: The Next Generation, TNG)がスタート。こちらも大ヒットし、7シーズン続きました。その後も、『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』(DS9)、『スタートレック:ヴォイジャー』(VOY)、『スタートレック:エンタープライズ』(ENT)と、スピンオフ作品が次々と誕生し、『スタートレック』の世界(ユニバース)は大きく広がっていきました。(TNGは劇場版も4作品製作されています)
21世紀に再び!現在進行形の『スタートレック』
そして、その旅は21世紀に入っても続いています! 2009年には、J・J・エイブラムス監督・製作によるリブート版映画シリーズが始動。これは、オリジナルシリーズとは異なる並行世界(タイムライン)を舞台に、若き日のカークやスポックたちの活躍を描くもので、新たなファン層を獲得しました(現在3作品公開、4作目も企画中?)。
さらにテレビシリーズも、『スタートレック:ディスカバリー』(DIS)(2017年~)、『スタートレック:ピカード』(PIC)(2020年~、TNGのピカード艦長のその後を描く)、そしてTOSの前日譚にあたる『スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』(SNW)(2022年~)などが次々と製作され、現在も好評放送中です! まさに、世代を超えて愛され続けるコンテンツなんですね。
広がる世界とパロディ作品
これら公式に認められたドラマや映画によって、『スタートレック』は独自の歴史と年表を持つ、壮大な「カノン(正史)」を形成しています。古い作品でのセリフが、新しい作品で映像化されるなど、シリーズを通して知っていると「ニヤリ」とできる仕掛けもたくさん!
その影響力の大きさは、パロディ作品が作られるほど! 映画『ギャラクシー・クエスト』(1999年)は、往年のSFドラマ(明らかにスタートレックがモデル!)の俳優たちが、本物の宇宙人に助けを求められるコメディ。TVドラマ『宇宙船オービル』(2017年~)は、スタートレック愛好家であるセス・マクファーレン製作・主演による、オマージュと愛に溢れた(時に真面目な)SFコメディドラマです。これらも、元ネタを知っていると10倍楽しめること間違いなし!
すべてのSFファンに見てほしい原点の輝き
いかがでしたか? 『スタートレック TOS』は、半世紀以上前の作品でありながら、その輝きは全く色褪せていません。魅力的なキャラクター、未知への探求心、そして何より、多様性を尊重し、対立ではなく対話と協調によって未来を築いていこうという、今まさに私たちが向き合うべき普遍的なテーマが、希望と共に描かれています。
確かに映像技術などは現代の作品には及びません。しかし、それを補って余りあるストーリーの面白さ、キャラクターの深み、そして未来へのポジティブなメッセージは、あなたの心にきっと響くはずです。数多くのSF作品に影響を与えた「原点」を知ることで、他のSFドラマや映画もより深く楽しめるようになるでしょう。
これから『スタートレック』の世界に足を踏み入れたいと思っている方、まずはこの『オリジナルシリーズ』から触れてみるのはいかがでしょうか? きっと、あなたもエンタープライズ号のクルーの一員になったような、ワクワクする宇宙の旅を体験できるはずです! 長寿と繁栄を!
この動画/記事を見るべき? 5段階評価
- SFドラマの歴史や原点に興味がある人:★★★★★
- 希望に満ちた未来や多様性の物語が好きな人:★★★★★
- 魅力的なキャラクタードラマを楽しみたい人:★★★★☆
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