近年、異常気象による大規模な浸水被害が頻発しています。
先日も三重県の地下駐車場で多数の車が冠水被害に遭うという痛ましいニュースがありました。この記事では、もしご自身の車が冠水してしまった場合の対処法、中古車購入時に冠水車を見極める方法ついて、専門的な知識を交えながら分かりやすく解説します。
「まさか自分が…」と思っている方も、万が一に備えて知っておくべき重要な情報です。ぜひ最後までご覧ください。
見どころ
今回の記事は、異常気象による車の冠水という、誰もが遭遇しうるリスクに備えるための知識を提供します。知識は最大の防御です。この記事を読むことで、万が一の事態にも冷静に対処できるようになり、また、中古車選びにおける不安を大きく軽減できるでしょう。愛車を守り、賢いカーライフを送るための一助となれば幸いです。
- 見どころ1:車両保険の重要性:★★★★★
- 見どころ2:冠水車の市場での行方:★★★★☆
- 見どころ3:素人でもできる冠水車の見極め方:★★★★☆
愛車が冠水したら?被害に遭われた方へのアドバイス
もし愛車が冠水してしまった場合、まず考えるべきは「修理」か「乗り換え」かです。結論から言うと、車両保険に加入していて選択肢があるならば、乗り換えを強くおすすめします。
車両保険が「命綱」となる理由
冠水は一般の事故とは異なり、自分ではコントロール不可能な災害です。
- 車両保険の適用:冠水による損害は、基本的に車両保険の「一般」または「車対車+限定A(エコノミー)」でカバーされることが多いです。
- 全損扱いになる可能性:修理費用が高額になる場合、全損(修理不能)と見なされ、保険金で乗り換え費用をまかなえる可能性があります。
- 保険がないと…:対人・対物賠償だけの保険では、自分の車の損害はカバーされません。全額自己負担となり、まさに「泣き寝入り」となります。
豆知識:車両保険の加入率
一般的に、車両保険の付保率は全体の約半分程度と言われています。しかし、台風や集中豪雨による被害が多い地域や、地下駐車場を利用する機会が多い方は、車両保険への加入を強く推奨します。事故だけでなく、自然災害や盗難など、予期せぬトラブルから愛車を守るためです。
なぜ「乗り換え」を推奨するのか
愛着のある車でも、冠水した場合は乗り換えが賢明です。その最大の理由は、後々の故障リスクと匂いにあります。
故障リスクは「精密機械」としての車ならでは
現代の車は、もはや単なる鉄の塊ではありません。パソコンよりも精密な電気系統の塊です。水に浸かるということは、パソコンを風呂に沈めるようなものだと想像してみてください。
- 電気系統のトラブル:ヒューズボックスや各種センサー、コンピューターユニット(ECU)などは、浸水によって深刻なダメージを受けます。すぐには症状が出なくても、後から電気系統のトラブルやヒューズ切れが頻発する可能性が高いです。
- 錆びの進行:水に浸かると、細かな部品の錆びが急速に進行します。特に淡水とは一味違う、泥水による錆び方は厄介です。
- エンジンのダメージ:水の高さがエンジンルームにまで達していた場合、重大な故障につながります。
どうしても消えない「匂い」の悩み
修理や清掃で最も難しいのが、匂いの除去です。泥水やカビの匂いは、いくら丁寧にクリーニングしても、車内の奥深くまで染み付いてしまい、完全に消すのは非常に困難です。
- シートや内装材:全てを剥がして徹底的に洗浄・乾燥させても、完全に除去するのは難しいとされています。
- 湿気とカビ:完全に乾ききらないうちに再び使用することで、カビの温床となる可能性もあります。
もちろん、「家族との思い出の車だ」「じいちゃんから受け継いだ大事な車だ」といった特別な理由がある場合は、保険を使って徹底的なオーバーホール(全部分解しての清掃・修理)に踏み切るという選択肢もあります。保険適用で大幅な修理が可能になるなら、ある意味「チャンス」と捉えることもできるかもしれません。
中古車を買う時、冠水車を「掴まされない」ために
被害に遭った車は、その後どうなるのでしょうか?実は、市場に出回る可能性があるため、中古車を購入する際には注意が必要です。「まさか冠水車を買うなんて…」と思うかもしれませんが、知らずに掴まされているケースは少なからず存在します。
中古の冠水車はどこへ行く?
多くの冠水車は、保険会社によって引き取られた後、専門の買取業者や解体業者に渡り、主にオークションに出品されます。
- 海外への輸出:基本的に冠水車を扱う業者が買い取り、その多くは海外へ輸出されます。特に東南アジアや中東、アフリカなどは、部品需要や修理コストの安さから人気が高いとされています。
- 国内での流通:オークションでは「冠水車」「修復歴あり」として申告されるのがルールです。しかし、一部悪質な業者が情報を隠して販売するケースも考えられます。近年はSNSの時代となり、そのような行為はすぐに発覚し信用を失うリスクが高いため、隠して売る業者は減っていますが、油断はできません。
「契約不適合責任」とは?
中古車購入後、それが冠水車であることが発覚した場合、購入から1年以内であれば契約不適合責任に基づき、基本的に返品が可能です。また、裁判では1年以上経過していても認められるケースがあるようです。購入時の契約書には、修復歴や冠水の有無に関する自己申告欄があることが多いため、販売者に正直に申告する責任があります。もし悪意を持って隠されていた場合は、法的措置も視野に入れるべきでしょう。
素人でもできる!冠水車の見極め方
販売業者が気づいていない、または悪意を持って隠している冠水車を「なるほど!」と見抜くための、プロも実践する見極めポイントをお伝えします。
1. シートベルトを全開まで引き出す
これが最も簡単で効果的な方法です。車内の水が足元まで浸かっている場合、シートベルトの巻き取り部分も水に浸かっている可能性が高いです。
- 確認方法:シートベルトを下まで一気に全て引き出します。
- チェックポイント:一番下まで引き出した部分に、泥やシミ、変色(ライン)がないかを確認してください。水が浸入し、乾いた跡が「リトマス試験紙」のように残っていることがあります。
2. 内装の「裏側」をチェックする
目に見える部分だけでなく、普段は見えないところに水の痕跡が残ります。
- ドアの内張り:ドアの内張りを剥がすと、水が浸入した「ライン」が残っていることがあります。
- 内装材の裏側:シート下の内張りなどを剥がし、土台のフレームに泥や水が溜まっていないかを確認します。特にトランクの下(リアのレール)やスペアタイヤハウス内などは、泥が残りやすい場所です。
- 匂い:まずカビっぽい、あるいは異様な匂いがしないかを確認することも重要です。
3. 下回りの錆びをチェックする
足元程度の浸水で済んだ車でも、下回りには影響が出ます。
- 確認方法:車をリフトアップして下から見るか、覗き込んで確認します。
- チェックポイント:年式に対して異常に広範囲に錆びが回っていたり、「なんでこんなところが錆びているんだ?」と感じる箇所があれば要注意です。普通の洗車では洗い流せない泥や錆びが残っている場合があります。
これらの方法で「怪しい」と感じた場合は、購入前に第三者機関に依頼しての調査を検討することをおすすめします。もし冠水車を掴まされたと感じたら、まずは消費者センターや公正取引委員会に相談するのが良いでしょう。泣き寝入りせず、専門の意見を聞いて正しい対処をしてください。
この記事で得た知識が、皆さんの安心で安全なカーライフの一助となれば幸いです。



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