従来の運転支援システムとは一線を画す、まるでベテランドライバーが運転しているような滑らかさと賢さ。その秘密は、従来のシステムをはるかに凌駕する「ビリオンオーダー」のパラメーターを持つ、超高性能なAI(人工知能)にあります。今回の体験は、まさに「人生が変わる」と言っても過言ではない、衝撃的なものでした。
これまでの運転支援システムに物足りなさを感じていた方、未来のクルマにワクワクしたい方は、ぜひこの先を読み進めてください。きっと「なるほど!」と感じる、目から鱗の情報が満載ですよ。
◆見どころの5段階評価
- 熟練ドライバーのような滑らかさ:★★★★★
- 緊急時の予測と回避能力:★★★★★
- 周囲との調和と協調性:★★★★★
未来の運転を支える「超高性能AI」の正体とは?
今回のプロトタイプに搭載されたAIは、一般的な運転支援システムのパラメーターが「ミリオンオーダー(百万単位)」であるのに対し、なんと「ビリオンオーダー(十億単位)」という、桁違いの賢さを持っています。その賢さの秘密は、主に以下の2つに集約されます。
ベテランドライバーの経験を学習した判断能力
このAIは、単に目の前の障害物を避けるだけではありません。まるで熟練したベテランドライバーのように、状況に応じた最適な判断を下します。例えば、狭い道で対向車とすれ違う際、急ブレーキをかけるのではなく、歩行者の動きを読み取りながら、自然な減速とスムーズなすり抜けを行います。これは、膨大な走行データからベテランドライバーの「予測」や「勘」を学習した結果なのです。
また、急な飛び出しや逆走する自転車に対しても、唐突に急ブレーキを踏むのではなく、緩やかに速度を落とすことで、周囲の交通の流れを乱さずに対応します。このさりげない気遣いこそが、まさにベテランドライバーのなせる技であり、このAIが持つ最大の魅力と言えるでしょう。
豆知識:
このAIは、一般的な運転支援システムが1秒間に1回(1Hz)の頻度で状況を判断するのに対し、なんと10倍の1秒間に10回(10Hz)で判断を行っています。さらに、変化が起こった際にはわずか0.1秒で反応するという驚異的な応答速度を誇ります。
周囲の交通と「調和」する走行スタイル
次世代プロパイロットは、単にルールに従って運転するだけでなく、周囲の交通と「調和」することを目的としています。「適度に譲り、適度に優先権を主張する」という、まさに人間社会で円滑にコミュニケーションを取るのと同じような走行を実現します。
例えば、信号のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時、一時停止して歩行者を優先します。また、狭い道でのすれ違いでは、相手に譲りつつも、無理のない範囲で自らの通行を確保します。こうした協調性があることで、周囲のドライバーをイライラさせることなく、スムーズな交通の流れを作り出します。
この「調和」する運転スタイルは、AIに「交通社会に溶け込むドライバーになる」というトレーニングを施した結果です。従来のシステムでは見られなかった、「人間に寄り添うAI」の新たな可能性を感じさせます。
チャットGPTと何が違う?AI開発の哲学
最近話題の「チャットGPT」と、このプロパイロットのAIは、同じ「AI」でも開発の方向性が全く異なります。チャットGPTが無限に情報を拡張し、自由奔放な発想を目指すのに対し、自動車に搭載されるAIは「安全性」を最優先します。
自動車は人の命を乗せて走るため、いたずらに機能を拡張するのではなく、「決められたことを、いかに間違いなく実行するか」が重要になります。ルールを破ったり、予測を裏切るような行動は許されません。
だからこそ、日産のこのAIはチャットGPTのような「兆(ちょう)」や「京(けい)」といった桁違いのパラメーター数ではなく、「正確さ」と「安全性」を追求する開発が行われています。この点は、一見地味に思えるかもしれませんが、自動車のAIにおいては何よりも重要な哲学なのです。
豆知識:
今回のAIは、イギリスで教育されたマザーモデルをベースに開発されており、日本の交通マナーを学習させるために追加学習が行われています。驚くべきことに、その追加学習量は元のモデルのわずか1%程度。残りの99%はイギリス仕込みの運転スタイルですが、その中でも「横断歩道のゼブラは絶対に踏まない」という鉄の掟は、再教育されても揺るがない、AIの興味深いキャラクターとして残っているそうです。
未来は「車の性格」を選べる時代に?
今回のプロトタイプでは、AIに様々なキャラクターを持たせる構想もあるようです。例えば、
- 急いでいる時:空港まで時間通りに着きたい時など、少しだけアグレッシブに走るモード
- リラックスしたい時:仕事で疲れた後、ゆったりと音楽を聴きながら帰宅するモード
- 安全性最優先の時:危なげのない、慎重な運転をするモード
このように、その日の気分や状況に合わせて、車の運転スタイルをカスタマイズできるようになるかもしれません。これは、単なる運転支援を超え、私たちのライフスタイルに寄り添う新たな価値を提供してくれることでしょう。
日産が目指すのは、単に安全な車を作るだけでなく、「良いやつが乗っている」と誰もが思えるような、人間味あふれるAIの開発です。ちんたら走らず、それでいて周囲に気配りができる。そんな理想的なAIが、もうすぐ私たちの目の前に現れようとしています。
この次世代プロパイロット3.0は、2027年にまずミニバン「エルグランド」に搭載されると予想されています。日産の技術革新は、まだまだとどまることを知りません。



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