新NISAが始まり、「S&P500と全世界株式、どちらも人気だから両方買っておこう」「S&P500をメインに、成長が期待できるApple株を個別にトッピングしよう」と考えている方、実はその組み合わせ、良かれと思った”分散投資”が「リスクの上塗り」になっているかもしれません。
多くの人が陥りがちな投資信託の組み合わせのワナと、迷った時に頼りになる専門家お墨付きの「太鼓判ファンド」を徹底解説します。あなたのポートフォリオ、この機会に一度見直してみませんか?
見どころ5段階評価
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- ありがちミスの指摘度:★★★★★
- ポートフォリオ改善度:★★★★★
- 初心者向け分かりやすさ:★★★★☆
あなたは大丈夫?分散投資の「つもり」が生む落とし穴
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があるように、資産運用において「分散」は基本中の基本です。しかし、実際には分散している「つもり」になっているだけで、効果がほとんどない、あるいは逆効果になっているケースが非常に多いと専門家は指摘します。
やりがちNo.1!「S&P500+全世界株式」はなぜダメなのか?
米国を代表する優良企業500社に投資する「S&P500」と、その名の通り世界中の企業に投資する「全世界株式(オール・カントリー)」。どちらも非常に人気の高いインデックスファンドですが、この2つを同時に保有するのは、残念ながら分散効果が低い組み合わせです。
その理由は、全世界株式の中身の約6割が、実は米国株式で占められているからです。つまり、この2つを一緒に買うということは、大部分が重複している商品を2つ買っているのと同じこと。専門家はこれを「幕の内弁当と松花堂弁当を2つ買うようなもの」と例えます。どちらも色々なおかずが入っていて美味しいですが、中身が似ているお弁当を2つも食べる必要はありませんよね。どちらか一方で十分なのです。
危険な「リスクの上塗り」 S&P500+好きな米国個別株
次に多いのが、S&P500のようなインデックスファンドをベースに持ちながら、Appleやテスラといった好きな米国企業の個別株を買い増すパターンです。これも、「分散」を目的としているのであれば、残念ながら間違いです。
S&P500の中には、すでに高い比率でAppleやテスラといった巨大企業が含まれています。そこにさらに同じ企業の株を買い足すのは、リスクを分散するどころか、特定の企業への依存度を高める「リスクの上塗り」に他なりません。これは「鮭弁当を注文したのに、さらに焼き鮭を単品でトッピングする」ようなもの。よほど鮭が好きで、その味に絶対の自信があるなら止めませんが、栄養バランスを考えるなら他の食材を選ぶべきです。「その企業の将来性に賭けたい」という明確な集中投資の意志があるならOKですが、分散が目的なら見直すべき組み合わせと言えるでしょう。
豆知識:同じインデックスファンドを複数買うのも意味がない?
「SBI証券のS&P500ファンドと、楽天証券のS&P500ファンドを両方買えば分散になる?」これもよくある勘違いです。運用会社が違っても、連動する指数(この場合はS&P500)が同じであれば、中身はほぼ同一です。違うお店で同じ幕の内弁当を買っているのと同じで、分散効果は全くありません。どれか一つに絞って積み立てるのが正解です。
ポートフォリオを強化する!科学的に正しい組み合わせ術
では、本当に分散効果を高めるには、どのような組み合わせが良いのでしょうか。大切なのは、異なる値動きをする資産を組み合わせることです。ここでは、ポートフォリオを安定させる効果的な組み合わせをご紹介します。
攻めと守りの名コンビ「S&P500 × 高配当株」
分散効果が高い組み合わせとして、専門家が推奨するのが「S&P500」と「高配当株」のコンビネーションです。
S&P500は、将来の成長が期待される「成長株(グロース株)」の比率が高いのが特徴です。景気が良い時には大きく値上がりしますが、下落局面では値下がり幅も大きくなる傾向があります。一方、高配当株は、ジョンソン・エンド・ジョンソンやマクドナルド、コカ・コーラといった、業績が安定した「成熟株(バリュー株)」が多く含まれます。大きな値上がりは期待しにくい反面、景気が後退する局面でも安定した配当を出し、株価が下支えされる傾向があります。
このように、一方が元気な時にもう一方が支える、という逆の動きをする傾向があるため、この2つを組み合わせることで、ポートフォリオ全体の値動きがマイルドになり、精神的にも安定した長期投資を続けやすくなるのです。
迷ったらコレ!専門家が選ぶ「太鼓判ファンド」3選
「理屈は分かったけど、具体的にどの商品を選べばいいの?」という方のために、専門家が「これなら間違いない」と太鼓判を押す、タイプの異なる3つの投資信託をご紹介します。これらは、単体で持つのも良いですし、3つを組み合わせて持つことで、非常にバランスの取れたポートフォリオを築くことも可能です。
- 1. 楽天・全米株式インデックス・ファンド
まず基本の1本として推奨されるのが、米国市場全体に投資するこのファンドです。S&P500が大型株500銘柄なのに対し、こちらは中小型株まで含めた約4000銘柄に投資するため、より広く分散が効いているのが特徴です。「最初の1本」として、またはポートフォリオの核として最適です。 - 2. ひふみプラス(などの国内アクティブファンド)
地域分散を考えるなら、日本株も選択肢に入ります。しかし、日本の株式市場は米国市場ほど全体の成長率が高くないため、日経平均などのインデックスに連動する商品よりも、専門家(ファンドマネージャー)が成長企業を厳選して投資する「アクティブファンド」の方が高いリターンを期待できる、という考え方があります。成長投資枠を使って、このようなアクティブファンドでリターンを狙うのも一つの戦略です。 - 3. 野村インデックスファンド・米国配当貴族
ポートフォリオの「守り」を固めるのがこのファンドです。「配当貴族」とは、なんと25年以上も連続で配当を増やし続けている超優良企業のこと。先述した「高配当株」の代表格であり、S&P500と組み合わせることで、ポートフォリオの安定感を格段に高めてくれます。積立投資枠でも購入可能です。
新NISAでの資産運用で最も大切なのは、「なぜその組み合わせにするのか」という目的意識をはっきりさせることです。
分散投資のつもりで、知らず知らずのうちにリスクを集中させていないか、この機会にご自身のポートフォリオをぜひ一度チェックしてみてください。
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