NVIDIAが動かす次の半導体市場と記憶者の真価、AI時代に広がるSSD革命の行方

NVIDIAが動かす次の半導体市場と記憶者の真価、AI時代に広がるSSD革命の行方 AI

見どころ

キオクシアはAI時代の「隠れ本命」として再評価が進んでいます。高速SSD開発や先進的な貼り合わせ技術など、技術力の底力は確かなものがあります。

  • AIストレージ革命の中心地:★★★★☆
  • 技術力の歴史的裏付け:★★★★★
  • 市場シェアの課題と成長余地:★★★☆☆

AIブームがもたらした「メモリ戦争」とは何か

AIの成長速度に合わせて、GPUの性能は飛躍的に伸びています。しかし、GPU単体では高速処理は成立しません。隣でデータを供給するメモリの性能が足を引っ張れば、どれほど高性能なGPUでも力を発揮できないからです。

現在もっとも注目されているのはSKハイニクスのHBM(高帯域幅メモリ)ですが、ここに来て「遅い」と言われ続けてきたNAND型フラッシュメモリにも光が当たり始めました。理由は単純で、AIモデルが巨大化しすぎたためです。GPUの近くに置けるDramだけではデータが収まりきらず、外側に大容量のSSDを積む必要が出てきたのです。

キオクシアが急浮上した理由

キオクシアに対して、NVIDIAが直接「超高速SSD」を要請したことは業界に大きな衝撃を与えました。GPUメーカーのトップが名指しで要望するというのは、それだけ需要が切迫している証拠です。

現在のSSDでは、NVIDIAが求めるAI処理速度を満たすには32台も必要になると言われています。しかしキオクシアはこれを「2~4台」にまで減らせるレベルまで高速化する方針を示しています。もしこれが実現すれば、AIストレージ市場のゲームチェンジャーになり得ます。

豆知識:AIの学習データは今やTBからPB(ペタバイト)単位に拡大しており、従来のサーバー構成では速度も容量もまったく追いつかなくなっています。

とはいえ、キオクシアの弱点も無視できない

大山氏が指摘する最大の懸念点は「NAND一本足打法」であることです。SSDにはNANDだけでなく、キャッシュ用としてDramも必須です。しかしキオクシアはDramを自社生産していません。そのため、SKハイニクスやサムスンなど競合から調達する必要があります。

ここには構造的なリスクが存在します。高速SSDがDram需要を部分的に奪うとすれば、競合メーカーは積極的にDramを供給しない可能性が出てきます。敵に塩を送る企業はいないということです。

技術力は世界トップだが、市場シェアでは苦戦

キオクシアのルーツである東芝は世界で初めてNANDフラッシュを発明し、3D構造のメモリでも世界初を成し遂げました。にもかかわらず、市場シェアではサムスンとSKグループに遅れを取っています。

その背景には「サムスンへの技術ライセンス提供」という歴史的ミスや、財務体質の弱さから不況時に十分な設備投資が行えなかったことが挙げられます。

ここがポイント:実は「不況のときこそ投資せよ」という業界哲学を最初に実践したのは東芝です。しかし後年はその財務基盤が続かず、逆に韓国勢がその戦略を活かしてシェアを奪っていきました。

キオクシアの切り札「貼り合わせ技術」と中国YMTCの脅威

キオクシアの得意技術として注目されているのが「2層ウェハー貼り合わせ(CBA)」です。データを記録する層と制御する層を別々に作り、後から精密に貼り合わせる技術で、メモリ密度を飛躍的に高めることができます。

しかし驚くべきことに、この貼り合わせ技術を先に実現したのは中国のYMTCでした。アメリカの制裁対象にもなった企業ですが、技術レベルは侮れず、キオクシアにとっては強力な競合となっています。

  • 高密度化のスピード競争
  • 製造コストの最適化
  • 先進技術の量産対応

これらの点でYMTCが加速すれば、市場シェアの逆転劇も起こり得ます。大山氏も「技術的には侮れない企業」とはっきり評価しています。

キオクシアはAI時代の主役か、それとも脇役か

キオクシアには確かに強みがあります。技術力の歴史、NVIDIAからの指名、貼り合わせ技術の優位性。しかし、シェアの低迷、Dramなしの構造、不利なサプライチェーンなど課題も多く存在します。

ただひとつ言えるのは、AI市場の急拡大により「ストレージの高速化」は避けられないテーマであり、その中心にNANDメーカーが立つ時代が来るということです。キオクシアはまさにその潮流の中にいます。

果たしてキオクシアはAIストレージ革命の主役になれるのか。投資家と技術者の双方にとって、今後の展開から目が離せない状況が続きます。

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