焼肉ホルモンの教科書:プロが教える「本当にうまい内臓部位」と見分け方

焼肉ホルモンの教科書:プロが教える「本当にうまい内臓部位」と見分け方 料理

焼肉好きが一度は抱く「ハラミってどこの肉?」「ホルモンって何が違うの?」という疑問を、精肉と内臓を知り尽くしたプロが徹底的に分解してくれる内容です。単なるグルメ紹介ではなく、解剖学レベルで部位を見せながら解説してくれるので、焼肉の見え方が根本から変わります。

しかも、専門的な話をしながらもテンポの良い掛け合いとユーモアで最後まで飽きさせません。「情報の塊」「これは儲かる部位です」といった本音トークも多く、焼肉ファンだけでなく飲食店経営者にも刺さる内容になっています。

見どころ評価

  • 部位の解剖・構造解説:★★★★★
  • 焼肉屋の裏側トーク:★★★★☆
  • 実用性(注文や選び方に生かせる度):★★★★★

ここからは、動画の内容を元に「焼肉ホルモンの教科書」として整理していきます。次に焼肉屋へ行く時、メニューの見え方が確実に変わるはずです。

ホルモンの基本:ハラミとタンは「肉」ではなく内臓だった

枝肉とホルモン:業界の分け方

動画の中で一番最初に強調されていたのが、「ハラミとタンは厳密にはお肉ではなくホルモン、つまり内臓です」という事実です。

業界では牛を屠畜したあと、大きく「枝肉(いわゆる赤身やロースなどの小肉)」「内臓(ホルモン)」に分けて扱います。

  • 枝肉側にはA5などの「等級」が付く。
  • 内臓はホルモン業者に一括で渡されるため、基本的に英語ランクは付きません。
  • そのため「A5ランクのホルモン」という表現は、厳密には存在しないというニュアンスです。

ただし、動画の肉屋さんは自分の牧場の牛を扱っているため、「どのランクの枝肉から出た内臓か」を把握しており、実質的には英語ランク相当の品質管理をしていると話していました。

豆知識:メニューに「A5ホルモン」と書いてあったら、業界的にはかなり苦しい表現です。正確には「A5の枝肉から取れたホルモン」という意味合いが近いと言えます。

ハラミと「下がり」:実は別物の超希少部位

動画では、横隔膜周辺の話も非常に詳しく解説されていました。

  • ハラミ:横隔膜の一部で、比較的知られた人気部位。
  • 下がり:牛の体勢や動きの関係で、ハラミを支えるような位置にある筋肉。量が極端に少ない希少部位。

プロいわく、「この中で最も柔らかくて総合点が高いのは下がり。しかも牛1頭からわずかしか取れないので焼肉屋同士の奪い合いになっている」とのことでした。

厚切りでも薄切りでも成立し、タレでも塩でもおいしい、完全なオールマイティプレイヤーとして2位にランクインしているのも納得です。

タンの真実:360度動く「宇宙みたいな部位」

タン先とタン元、そして皮とザラザラの正体

和牛タンは、表面に非常に硬い皮が付き、ザラザラした部分があります。これは牛が草などを削り取るための「やすり」のような構造で、繊維が逆方向に並んでいると説明されていました。

タンは大きくタン先タン元に分かれます。

  • タン先:脂が少なめで、歯ごたえがある部分。一般的には薄切り焼きに使われることが多い。
  • タン元:脂がしっかり入り、ジューシーで高級部位として扱われることが多い。

どの方向に切っても「正解」な珍しい筋肉

普通の筋肉は、筋繊維の流れに対して直角に切るかどうかが食感を左右しますが、タンだけは別格です。動画のプロ曰く、「上下左右、前後どちらに動かしても筋肉が動く。筋繊維が360度に走っている唯一の筋肉」とのことでした。

そのため、タンは「どう切っても食べられる」という極めて珍しい部位です。切り方次第で食感や焼き方も変化し、熟成との相性も良いことから、プロは「肉の技術の宝箱」「宇宙みたいな部位」と表現していました。

豆知識:動画内では、「アメリカ産のタンが和牛に迫るレベルでうまいこともある」「切り方次第では素人は見分けがつかないレベル」といった現場感のある話も出ていました。

心臓、ホホ肉、コリコリ:知られざる人気ホルモンたち

心臓(ハツ・ヘルツ)の構造と食感の違い

牛の心臓は人間と同じく4つの部屋に分かれています。動画では実物を開きながら、以下のように解説していました。

  • 心室:コリコリとした弾力があり、いわゆる「お肉っぽい」味わい。
  • 心房:プリプリした食感で、薄くて軽い口当たり。
  • 大動脈周り:これが「コリコリ」と呼ばれる部分で、管状の組織を開いて焼いて食べる。

関西では心臓をドイツ語由来で「ヘルツ」と呼ぶ文化があり、関東ではシンプルに「ハツ」と呼ばれることが多いという、地域差の話も面白いポイントでした。

ホホ肉(頰肉)は「隠れ最強クラス」の赤身ホルモン

ホホ肉はミルフィーユ状に脂と筋肉が重なっている部位で、関西では「天肉」と呼ばれることもあるそうです。

  • 薄くスライスして焼くと、筋が縮んでジャバラ状になり、独特の食感になる。
  • 赤身と脂のバランスが非常に良く、関西人からは「この中で一番うまいと言っても過言ではない」と評価されることもある。

ラーメン屋向けの裏ワザとして、「ホホ肉チャーシューにするとコスパ最強クラス」という話も飛び出していました。煮込みにも焼きにも使える万能赤身ホルモンです。

レバーのシャトーブリアンと食中毒リスク

レバーにも「シャトーブリアン」が存在する

動画ではレバーを大きな塊のまま手に持ち、厚い部分から薄い先端へと形状の変化を見せながら解説していました。

  • レバーには大きな血管が通るゾーンと、きめ細かい細胞のゾーンがある。
  • 薄い膜(小膜)を境にして、血管の走り方と細胞のきめがガラッと変わる。
  • プロが狙うのは、血管が細かくきめが整っている側。ここが「レバーのシャトーブリアン」と言える部分。

同じ「牛レバー」として出されていても、どの位置から切り出されたかで香りや舌触りがまったく変わるという指摘は、レバー好きにはかなり刺さる内容です。

生レバー禁止の背景と賞味期限のリアル

動画では、レバーの食中毒リスクについても具体的に言及がありました。

  • 牛レバーにはO157やカンピロバクターなどの菌が血液由来で含まれる可能性がある。
  • 厚生労働省の検査では、およそ200頭に1頭程度の割合でリスクがあるとされ、生食提供は禁止になった。
  • 冷蔵の賞味期限の目安はおおむね10日、真空パックで20日、冷凍で90〜180日程度という現場感のある数字も紹介されていました。

個体識別番号をインターネットで調べると「屠畜日」「加工日」などが確認できるため、「加工日より前に屠畜されている=一度冷凍を挟んでいる可能性が高い」という見抜き方も紹介されていたのが印象的です。

豆知識:肉を開けた時にドリップ(肉汁)が大量に出ている場合、一度冷凍されていることが多いと解説していました。ラベルの個体識別番号と合わせてチェックすると、目利きレベルが一段上がります。

胃袋4連戦:ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ

ミノとハチノス:砕いて洗って消化を助ける部位

牛の胃袋は4つありますが、動画ではそれらをまとめて「胃袋4連戦」として解説していました。

  • ミノ:第1胃。石や砂利まで噛み砕くゴリゴリ担当。皮を剥ぐとおなじみの白いミノが現れる。
  • ハチノス:第2胃。ハチの巣のような構造で、イタリア料理のトリッパとしても有名。

ハチノスは、昔は「洗濯機に入れて回していた」という笑えないレベルの現場話も飛び出すほど、徹底的に洗浄して臭みを取る必要がある部位だと説明していました。

センマイとギアラ:焼肉屋がまだ本気で売れていない宝物

センマイは幾重にも折りたたまれた白いヒダを持つ部位で、しっかり洗うことで白くきれいになり、刺身や湯引きで提供されることも多いとのことでした。

そして動画の主役級だったのがギアラ(赤セン)です。

  • 第4胃にあたる部位で、「赤セン」「赤カ」「赤ビ」など細かい呼び名がある。
  • 柔らかく噛み切れて、脂も旨みも強いのに、まだ一般にはあまり知られていない。
  • プロいわく、「ホルモンの中で最も儲かる部位の1つ。ちゃんと処理して出せば、店側にとってもお客様にとっても得しかない」。

豆知識:メニューで「特上ホルモン」とだけ書かれていて部位説明が無い場合、実はかなりの確率でギアラの良い部分を使っていることがある、という現場目線の話も出ていました。

腸とその他の部位:丸腸、テッチャン、テール、アキレス

丸腸とテッチャン:油とコラーゲンの世界

小腸と大腸も、焼肉では重要なホルモンです。

  • 丸腸:本来は内側にある脂の部分をひっくり返して外に出した状態で提供される。和牛の脂が一番おいしいと語られ、脂の香りで産地や育ち方が分かると言っていたのが印象的です。
  • テッチャン(大腸):開いた状態で使われることが多く、じっくり茹でてから焼き鳥のタレなどを塗り、炙って寿司のように握ると「穴子のような一品になる」というユニークなアレンジも紹介されていました。

丸腸を裏返さずに腸だけをカットし、脂を揚げたものが「油カス」と呼ばれ、大阪名物のかすうどんなどに使われることも説明されていました。

テールとアキレス:スープと煮込みの最終兵器

尻尾にあたるテールは、星型の骨の隙間に肉が詰まっており、じっくり煮込むことで極上の出汁が取れます。

  • テールスープやコムタンスープのベースとして使うと、ラーメン屋視点でも「めちゃくちゃ儲かる」と断言していたのが印象的でした。
  • 骨と骨の感覚が規則的なので、そこを見て等間隔でカットするときれいに分けられるという実践的なコツも紹介されました。

アキレスはアキレス腱の部分で、煮込むとコラーゲンの塊のようにプルプルになります。カレーや和食の煮込みに入れると、旨みと食感の両方を底上げしてくれる「ニコミの最強パーツ」として紹介されていました。

豆知識:アキレスは4本分あるため、牛1頭買いする業者であれば確実に手に入るそうですが、一般小売にはあまり出回らないレア部位とのことでした。

プロが選ぶ「最もおいしいホルモン」ベスト5

第5位〜第3位

  • 第5位 レバー:栄養価が高く、血液と旨みの塊。きめの細かい側は香りと舌触りが別格で、「レバーのシャトーブリアン」と呼びたくなる部分が存在すると解説されていました。
  • 第4位 ホホ肉:英語ランク付きの和牛ホホ肉は、脂の入り方と赤身のバランスが段違い。関西では天肉と呼ばれ、焼いても煮てもチャーシューにしても強い万能選手です。
  • 第3位 ギアラ(赤セン):まだ認知度が低く、消費者もプロも「本当の旨さ」に気づききっていない部位。だからこそ今が狙い目と語られていました。

第2位 下がり、第1位 和牛タン

  • 第2位 下がり:ハラミを支えるような位置にある筋肉で、希少性が非常に高い部位。柔らかく、ジューシーで、塩でもタレでも厚切りでも薄切りでも成立する「焼肉屋が一番欲しがるけれど、ほとんど手に入らないホルモン」として紹介されていました。
  • 第1位 和牛タン:プロ本人も「自分はタンで有名になったようなもの」と語るほどの看板部位。タン先、タン中、タン元、喉元など、切り分け方と調理法の組み合わせで無限の可能性を持つ、まさに「肉の技術の集大成」として堂々の1位でした。

ランキングの裏には、「いかに店側が手に入れにくいか」「どれだけ調理の自由度があるか」「実際に食べた時のインパクトがどれくらいか」という現場感のある評価軸が透けて見えます。

焼肉屋で「通っぽく」頼むならどこを見るか

次に焼肉屋へ行った時にすぐ使える視点をまとめると、ポイントは以下のようになります。

  • メニューに「下がり」や「赤セン」「ギアラ」「ホホ肉(天肉)」といった表記があるか。
  • ホルモンの部位説明がきちんと書かれているか、それとも「特上ホルモン」とだけ曖昧に書かれているか。
  • タンの部位(タン元、タン中、タン先)を分けて提供しているかどうか。

これらを見るだけで、その店がどこまで内臓にこだわっているか、どの程度知識と仕入れの力があるかをある程度読み取れるようになります。

焼肉が「情報の塊」に見えてくる感覚

動画の中で印象的だったのは、「内臓は情報の塊です」という言葉でした。細胞のきめ、血管の走り方、脂の入り方、皮や膜の位置などを見れば、「どの部位のどの場所か」が分かるという世界です。

普段はただ「おいしいかどうか」だけで食べているホルモンも、構造と役割を知ることで、「なぜこの食感なのか」「どんな調理が合うのか」といった視点が生まれます。これは単なるグルメ情報ではなく、食材リテラシーとして非常に価値の高い知識だと感じさせてくれる動画でした。

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