「聞いてください」を捨てよ。「聞かせてください」で決まる。一流のアポトーク設計術

「聞いてください」を捨てよ。「聞かせてください」で決まる。一流のアポトーク設計術 解説

見どころ

「挨拶で回っています」「一度お話だけでも」は契約から最も遠いアポです。Before→Afterのみを語る導入と、主導権を握る「聞かせてください」クロージングに切り替えることで、角度と感度の高いアポイントだけを残します。

総合評価:★★★★☆

  • メリット:契約確率の低いアポを排除し、商談化率と受注率の双方を底上げできます。
  • ポジティブメッセージ:話術より設計です。スクリプト化すれば、誰でも再現できます。

見どころ1:★★★★★ 「挨拶アポ」「情報小出しアポ」をやめる理由と、現代の情報環境に適応した対案。

見どころ2:★★★★☆ Before→Afterだけを語る導入で興味ギャップを作る、心理学的に妥当なトリガー設計。

見どころ3:★★★★☆ 「聞いてください」→「聞かせてください」へ。主導権を移さないクロージングの台本化。

本文:一流のアポトークは「契約から逆算」して設計する

1. アポの目的は一つだけ――契約のためです。

アポイントは「会うこと」ではなく「契約のための仮説検証の場」を確保する行為です。アポが多くても受注がゼロなら、成果はゼロです。

だからこそ、最初の電話から契約までの一本道を設計し、角度と感度の低い面談は切り捨てる必要があります。

2. ダメなアポ①:「挨拶で回っています」

  • 大手の看板があると面会は取れますが、契約確率は上がりません
  • 看板が弱い企業では、面談自体が拒否されます。
  • 「会うこと」が目的化し、検討課題も次アクションも不在の面談になりがちです。

3. ダメなアポ②:「一度お話だけでも」――情報小出しアポ

  • メリットや差別化を少量提示して興味を誘う手法は、“その場で満足”を生みやすく、面談理由を失わせます。
  • 商品が激レアな新規カテゴリでない限り、既知情報として流されます。
  • 結果、「いつか検討」フォルダに吸い込まれます。

豆知識: 初回接触で情報を与えすぎると、脳は「処理完了」と誤解し行動意欲が下がります。逆に認知ギャップ(未完了)があると、埋めたくなる性質が働きます。

Before→Afterだけを語る導入が最短距離

4. 入口は「事例の前後」だけで十分です。

  • Before:導入前の状態を1文で具体化(コスト・工数・歩留まり・CVRなど)。
  • After:導入後の数値変化を1文で提示(例:CVR 1.2%→2.1%、印刷単価 a/b→a/2b)。
  • 間(メカニズム)は語らない:相手に「その間」を聞かせる理由を作ります。

この構造は、流行したダイエット広告が証明してきました。工程ではなく結果の差を見せると、人は自分事化を始めます。商談の入口では、「すごさ」より「差」を見せるのが鉄則です。

5. 例:B2B複合機のアポ導入文(60秒)

「御社と同規模のA社は、月間印刷コストが30%高止まりしていました(Before)。3カ月後、保守形態と単価見直しだけで月次コストを28%削減しました(After)。その間の具体策が御社に合うかは、現状の契約条項と稼働実態を拝見しないと判断できません。御社側の条件を聞かせてください。30分だけ、契約書と月次ログをご準備いただければ十分です。」

主導権を渡さないクロージング:「聞いてください」禁止

6. 「聞かせてください」へ言い換えると何が変わるか。

  • 主語が変わる:「話すのは営業」から「話すのは顧客」へ。
  • 役割が変わる:説明→診断。営業は説明者ではなく、適合性の判定者になります。
  • 行動が決まる:面談の必須持ち物と議題が明確化され、約束の質が上がります。

7. 決め口テンプレ(そのまま使えます)

  • 宣言型:「一次診断→見積→判定の3ステップです。初回は木曜15時に30分、契約書控えと直近3カ月の実績だけ聞かせてください。私から招待をお送りします。」
  • 代替案付き:「木曜15時が難しければ、金曜10時に切り替えます。いずれも30分、同じ持ち物です。」
  • 既定路線化:「今回は適合性の判定だけです。合わなければ不採用を提案します。では木曜15時で進めます。よろしくお願いします。

豆知識: 日本語の「よろしくお願いします」は合意要求の定型句として機能します。疑問形を避け、宣言→依頼の順で締めると、離脱率が下がります。

スクリプト化:明日からの運用手順

8. 台本の3ブロックを書き出す

  • オープニング:関係者感で軽く入るか、「営業の連絡です」と言い切る。
  • 導入:Before→Afterのみを60秒以内で提示。
  • クロージング:聞かせてください(必要資料・所要時間)」+日時の宣言。

9. 反応ログを付ける

  • 各フレーズに対し、○/△/×を記録し、○のみ翌日に残します。
  • 「沈黙」「即断り」の発生位置を特定し、直前の文を差し替えます。
  • 断り文句(例:「今は不要」「他社で満足」)に対し、返しの定型文を3種用意してローテーションします。

10. 断り文句への返し(3種×2例)

  • 今は不要:だからこそ費用発生ゼロの一次診断だけ先に置きませんか。」/「更新月の前倒しが不可なら、条件固定の基準だけ確認させてください。」
  • 他社で満足:「満足の基準を見える化して維持できているか、一緒に監査しましょう。」/「御社で満足が続くなら不採用を提案します。適合性だけ聞かせてください。」

実践トレーニング:1日30分で仕上げる

11. 15分:通し録音

  • 導入60秒とクロージング30秒を一息で読み、語尾の安定と不要語を削ります。

12. 10分:置き換え練習

  • 「聞いてください」を全て「聞かせてください」に置換し、必要資料時間を必ずセットで言います。

13. 5分:宣言の練習

  • 木曜15時で設定します。よろしくお願いします。」を淀みなく言う練習を繰り返します。

NGコレクション(やめると決める)

  • 「まずはご挨拶だけでも」――目的不在の面談は作らない。
  • 「一度お話だけでも」――情報小出しは満足を生む。未完了を残す。
  • 「ご都合いかがですか?」――疑問形で終わらせない。宣言→依頼で締める。

豆知識: 台本は語尾統一(です・ます)で声の下降が安定し、信頼感が上がります。断定は短く、依頼は具体化が基本です。

入口×興味ギャップ×主導権=契約率

  • 入口:軽い関係者感 or 「営業の連絡です」と言い切る。
  • 興味ギャップ:Before→Afterのみで「間」を語らない。
  • 主導権:「聞かせてください」+持ち物と所要時間+日時の宣言。

一年続ければ、同じ架電本数でも成果は別物になります。まずは今日、導入60秒とクロージング30秒を書き換え、3件だけ実行してください。

最初に変わるのは、相手の反応ではなく、あなたの台本です。

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