見どころ評価
- アプリ統合SDK「Apps SDK」:★★★★★
- エージェント構築ツール「Agent Kit」:★★★★☆
- 映像生成モデル「Sora 2」:★★★★★
AIが遊び道具から創造基盤へ、サム・アルトマンの開幕スピーチ
サンフランシスコで行われたOpenAI Dev Day 2025。CEOサム・アルトマンが登壇し、「AIは今、遊びから創造のインフラへ進化した」と宣言しました。
2023年には週2億人の開発者が関わっていたChatGPTは、いまや週8億ユーザー・毎分60億トークン処理という規模に到達しています。かつての未来の話が、もはや日常の話になったのです。
サムは壇上でこう語ります。「AIで何かを作るスピードが、これほどまでに速くなった時代はない」。
まさにアイデアが現実になるまでの時間を短縮することこそ、今回のDev Dayのテーマでした。
1. ChatGPTがアプリのプラットフォームになる、Apps SDKの衝撃
最初の発表は「Apps SDK」。これにより、ChatGPTの中で本格的なアプリを動かせる時代が到来します。
デモでは、Courseraが学習動画をそのままChatGPT内で再生し、AIが講義内容をリアルタイムで解説。
さらにCanvaが犬の散歩ビジネス用ポスターを即生成し、Zillowが地図上で不動産検索を可能にするなど、まさに「ChatGPTがアプリのOSになる」瞬間でした。
このApps SDKでは、開発者がHTML・MCP(Model Context Protocol)ベースでUIやロジックを自在に構築できます。
さらに、アプリ内課金を可能にするAgentic Commerce Protocolまで発表され、ChatGPTが新たな「アプリストア」になるビジョンが明確に示されました。
豆知識: MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントが外部データやアプリと通信するための標準仕様。OpenAIが提唱し、開発者が独自のサービスをChatGPTに接続できる仕組みです。
2. AIエージェントを8分で構築、Agent Kitが描く自動化の未来
続いて登場したのは「Agent Kit」。これは、AIエージェントを迅速に作成・展開するための統合ツールセットです。
ステージ上ではOpenAIのクリスティーナ氏が、実際に8分でAIエージェントを構築するデモを実施。
ビジュアルフローを使い、ノーコードでガードレール(情報漏洩防止)やウィジェット(UI)を設定し、即座に公開しました。
この「Agent Kit」は企業利用も想定。
小売大手アルバートソンズは、売上データの異常をAIが自動検出・提案するエージェントを導入。
HubSpotは顧客対応AI「Breeze」を進化させ、ユーザーの質問に文脈を踏まえて最適回答を生成できるようになりました。
ポイント: Agent Kitの最大の強みは「評価ループ(evals)」機能。AIの意思決定過程を可視化し、改善を自動で繰り返す学習するエージェントを簡単に構築できる点です。
3. CodexがGPT-5モデルで進化、「書く」から「共に創る」へ
続くテーマはソフトウェア開発革命。OpenAIは、AI開発支援ツール「Codex」をGPT-5ベースに刷新しました。
この新Codexは単なるコード補完を超え、エンジニアの共同開発者として進化しています。
驚きのデモでは、開発者が一行もコードを書かずに、
Sonyカメラを制御するアプリを作り、Xboxコントローラーで操作、さらに音声で照明まで制御。
観客のライトを操作して「Hello, amazing developers at Fort Mason!」と会場を照らすシーンは圧巻でした。
新機能の一部
- Slack連携:チームチャットから直接コード生成やレビュー
- Codex SDK:開発者が自社ワークフローにAIを統合可能
- 自動コードレビュー・可変思考時間:タスクの難易度に応じて推論時間を最適化
豆知識: CodexはOpenAI社内でも全面採用されており、エンジニアの週次プルリクエスト数が70%増加したとのこと。いまや「AIが書いたコードを人間がレビューする」時代に突入しています。
4. クリエイターのための新武器、Sora 2とGPT-5 Pro
映像生成AI「Sora 2」は、待望のAPI提供が開始されました。
単なるビデオ生成ではなく、音と映像の完全同期を実現。
たとえばカヤック映像では、波音・風音・環境音がリアルタイムに生成され、視覚と聴覚の没入感が格段に向上しています。
さらに写真1枚から犬が仲間と遊ぶ動画を作るなど、想像を超える体験を実現。
デモではMattelのデザイナーがスケッチから数分で玩具のコンセプトムービーを生成する様子も紹介されました。
関連情報: Sora 2は「長さ・比率・解像度」を指定できる柔軟設計。編集ソフト不要で、商用レベルの映像制作をアプリ内で完結できます。
同時に、GPT-5 ProがAPIで正式リリース。
法務・医療・金融など、高精度な推論を要する分野向けの最上位モデルです。
OpenAIはこれを「最も知的なモデル」と表現しました。
5. AI開発の民主化、「一人のアイデアが世界を変える」
最後にサムはこう締めくくりました。「もう大規模チームはいらない。必要なのは、良いアイデアだけだ」。
AIが開発プロセスを根底から変え、アイデアのスピードで世界が動く時代が到来しています。
アプリはChatGPTの中で動き、エージェントは自動で学び、コードはAIが書く。
映像すら言葉で生成できる。
もはや「AIにできないこと」を探す方が難しいかもしれません。
OpenAI Dev Day 2025:「AIが開発の主役になる時代」の幕開けを告げました。Apps SDKでアプリが会話に溶け込み、Agent Kitでビジネスが自動化され、CodexとSora 2が創造を拡張する。次の革命は、もう始まっています。
アルトマンの最後の言葉が象徴的でした。「AIをすべての人に使いやすくする。それは私たちだけではできない。あなたたちが必要だ」。
世界中の開発者に向けた、その呼びかけこそ、OpenAIが描く未来そのものです。



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