日本の半導体は復活できるのか:テレ東WBSの議論を2025年時点で検証する

日本の半導体は復活できるのか:テレ東WBSの議論を2025年時点で検証する 株式投資

※この記事は動画内容をもとに構成しつつ、2025年10月時点の最新状況と照らし合わせて「どこが正しく、どこが外れているのか」を評価しています。

かつて世界を席巻した日本の半導体産業は、1980年代にはDRAMで世界シェア80%を獲得し「半導体王国」と呼ばれました。しかし現在は韓国・台湾・米国に主導権を握られ、その地位は大きく低下しました。

この記事では、2022年にテレビ東京の半導体特集動画で語られた論点を整理しながら、2025年10月の時点でそれがどこまで現実と一致しているのかを評価します。

見どころ評価

  • 日本の半導体衰退の本質理解:★★★★★
  • 復活戦略の現実性分析:★★★★☆
  • 2025年最新状況との整合性評価:★★★★☆

ポイント: 本記事は、動画内の議論を鵜呑みにせず、2025年の事実に基づき検証します。

日本半導体の凋落はなぜ起きたのか

イノベーションのジレンマは本当に原因だったのか

動画内で語られた通り、日本の半導体衰退の主因は「品質過剰」と「方向転換の遅れ」でした。DRAMで世界一になった日本企業は、高信頼性・長寿命設計を重視し続けてしまい、市場が求めた「安価で大量供給できるメモリ」の潮流に乗れませんでした。この評価は2025年の現在も一般的な認識と一致しており妥当だといえます。

  • 1980年代:DRAMシェア80%(NEC、東芝、日立)
  • 1990年代:サムスン・SKハイニックスが台頭
  • 2000年代:日本企業はDRAM撤退へ

動画の説明はこの歴史的事実と一致しており、この部分の分析は正確です。

2025年の最新産業構造はどうなっているか

動画では当時の日本について「ロジック半導体がほぼ作れていない」「製造装置と材料に強みがある」と語られていました。2025年の時点でもこれは正確です。

2025年の実情

  • 製造装置:東京エレクトロン、SCREEN、日立ハイテクが依然世界上位
  • 材料:JSR、SUMCO、信越化学などが世界シェアの6〜8割
  • ロジック製造:ほぼ壊滅、国内量産は存在しない
  • ファブレス:依然日本はほぼ不在(海外勢が独占)

したがって、動画で示された「日本の役割は材料・装置」「ロジック製造はTSMC頼み」という構造認識は今も当たっています。

TSMC熊本工場は正解だったのか

動画ではTSMC熊本の誘致に対し「経済安保にならない」「28nmは古い」という批判がありました。では2025年10月現在の結果はどうか検証します。

経済安保としては限定的だが、産業刺激策としては一定の効果

  • 熊本第一工場(JASM)2024年稼働、28/22nm量産 → 現在フル稼働に近い稼働率
  • 熊本第二工場:2026年稼働予定、12/6nm対応 → 世代は古いが日本企業の需要あり
  • 雇用面:九州の技術者不足が深刻化し「半導体人材争奪戦」発生中
  • 関連投資:ソニー、デンソー、東京エレクトロンなど国内企業波及は事実

評価: 安全保障としては中途半端だが、国内半導体産業の生態系再生にはプラス。動画は批判的過ぎる。

Micron広島とラピダスはどうなったのか

Micronは現在、日本の本命勢力に浮上

動画内で指摘された通り、Micronは最重要企業になりました。HBM(次世代メモリ)量産を広島で2025年開始し、TSMCよりも日本市場へのコミット度が高い企業となっています。

ラピダスは期待と不安が混在

2025年、2nm試作成功は事実ですが量産はまだ未知数です。動画内では触れられていませんが、現時点では半導体復活の象徴プロジェクトという位置付けになっています。

動画の結論は当たっていたのか

動画の主張の中で2025年現在でも当たっている点と、外れている点を整理します。

  • 当たっていた: 日本の強みは材料・製造装置にある
  • 当たっていた: 半導体はもはや国家安全保障のテーマ
  • 当たっていた: 半導体人材育成が最大の課題
  • 外れている: TSMC熊本は日本に利益がない → 実際は地方経済に大きな波及
  • 外れている: 日本はもう浮上できない → Micronとラピダスで復活の芽あり

日本はどこで勝負するべきか

製造装置と先端メモリで世界の中心は取れる

動画ではファブレス推進を提案していましたが、2025年時点で現実的な勝ち筋は次の3つです。

  • 製造装置 No.1国家の継続(東京エレクトロンが鍵)
  • HBMメモリでMicron広島を支援
  • ラピダスによる先端ロジック挑戦の継続

結論: 日本は「全部取り返す」のではなく「サプライチェーンの中で主導権を持つ分野に集中」すべきです。

予想された悲観論は当たらなかった

この動画の議論には的確な部分と過剰に悲観的な部分が混ざっていました。しかし本質は変わりません。日本が復活する最大の鍵は、人材育成と技術戦略です。メーカーを守る時代は終わり、技術を磨き続ける国だけが半導体で生き残れます。

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