2024年6月21日、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が開催した「SoftBank World 2024」での基調講演は、日本中に、いや世界中に衝撃を与える内容でした。人工一般知能（AGI）が「10年以内」に実現すると断言し、その圧倒的なパワーが社会や産業、そして私たちの人生観まで根底から変革すると力説。
その一方で、日本の現状に対する強烈な危機感も表明しました。果たして、孫氏が見据える未来とはどのようなものなのでしょうか？ そして、私たちはこの巨大な変革の波にどう立ち向かうべきなのでしょうか？
この講演の見どころはここ！5段階評価で深掘り
孫正義氏のビジョンは、常に私たちを驚かせ、未来への想像力を掻き立てます。今回の講演も、未来を楽観視するだけでなく、私たち一人ひとりが今、何をすべきかを真剣に問いかけるメッセージに満ち溢れていました。AGIの圧倒的な恩恵を享受し、より豊かな社会を築くためのヒントが満載です。さあ、そのポイントをチェックしてみましょう！
- AGI実現への確固たる信念と未来像：★★★★★
孫氏が「10年以内」と断言するAGIのインパクトは想像を絶します。人類の英知の総和の10倍という知能が、私たちの社会にどんな革命をもたらすのか。その具体的なビジョンが明確に示され、未来への期待感が一気に高まります。「金魚にABCは分からない」という例えは、AGIと人間の間の知能の差を痛烈に示し、私たちの意識を変える強烈なメッセージでした。 - 日本への強烈な危機感と具体的な提言：★★★★★
GPT-4の活用率の低さやAI利用を禁止する企業の多さに「日本はヤバい」と警鐘を鳴らす孫氏の言葉は、まさに私たちの心を揺さぶります。ただ現状を憂うだけでなく、AIを「知恵の相談相手」「ディベート相手」として活用すべきだという具体的な示唆は、明日から実践できるヒントを与えてくれます。この危機感を共有し、行動に移すことの重要性を強く訴えかけられました。 - ソフトバンクグループ、そしてArmの未来戦略：★★★★☆
ソフトバンクグループがAI活用を全社的に推進している実例や、孫氏個人が特許出願に注力している話は、その本気度を物語ります。さらに、AI時代の基盤を支えるArmの重要性、そして「MMM（Multi-Modal Modeling）」という新たなAIの概念の提示は、技術の最先端を垣間見せてくれました。これらの戦略が、いかにしてAGI時代を加速させるか、その道筋が示されています。
AIは新たな生命体か？ 孫氏が語る「知能」の進化
孫正義氏は、知能の強さを紐解く上で、「ニューロンの数というハードウェア的要因」と「学習というソフトウェア的要因」の二つが不可欠だと語ります。これはAIにも全く同じことが言え、「ニューラルエンジンの強さ（チップ）」と「トレーニング（学習）」が、その能力を決定するのです。このシンプルな構造が、現在のAIブームの根底にあることを示唆しています。
講演の中で、孫氏は非常に印象的な例えを挙げました。それが「金魚にABCは分からない」という言葉です。金魚の脳のニューロン数は約1,000万個。対して人間の脳は約1,000億個。この途方もない差が、理解力の根本的な違いを生み出すことを端的に示しています。AIが人間の英知を超えた時、その知能の差は、まさに金魚と人間のそれと同じくらい圧倒的なものになる、と孫氏は警告しているのです。
豆知識：ニューロンと知能：人間の脳には約860億個のニューロンがあると言われています。この膨大な数のニューロンが複雑に結びつき、学習と経験を通じて知能を形成しています。AIのニューラルネットワークも、この脳の構造を模倣して設計されており、ニューロンの数が多いほど、より複雑な情報処理が可能になるという考え方は、生物学とAIの両方で共通している興味深い視点ですね。
なぜ今、AIがこれほど注目されるのか？
AIは以前から存在していましたが、なぜ今これほどまでに世界中で語られるようになったのでしょうか？ 孫氏はその背景に二つの大きな要因があると指摘します。
- 生成AIのアルゴリズムの飛躍的な進化: 大規模言語モデル（LLM）の登場は、AIが単なるデータ処理装置ではなく、「創造」する能力を持つことを示しました。まるで魔法のように自然な文章や画像を生成する能力は、多くの人々に衝撃を与えました。
- ニューラルエンジンの圧倒的な強さ（チップ性能の向上）: AIの脳とも言える半導体チップの性能が飛躍的に向上しました。これにより、膨大なデータを高速で処理し、複雑な学習を短時間で行うことが可能になり、AIの能力を劇的に引き上げました。
これら二つの要素が融合することで、AIはこれまで想像もできなかったレベルに到達したのです。そして、この進化の先に人工一般知能（AGI）が見えてきた、と孫氏は強調します。
「人類の英知の総和の10倍」～AGIの衝撃的な定義と10年予測
孫氏が最も力を込めて語ったのが、このAGIの概念でした。AGIとは、特定の分野に特化したAI（例えばチェスAIや画像認識AIなど）とは異なり、「ほぼ全部の分野で人間の英知を抜き去ってしまう状況」を指します。孫氏自身のイメージでは、「人類の英知の総和の10倍ぐらい優れている英知に達した時」がAGIの達成であると定義しました。これは、単に人間を超えるだけでなく、人類全体の知識と知恵を遥かに凌駕する存在が生まれる、という途方もない予測です。
「10年以内」にAGIが実現する！？
そして、講演の中で最も聴衆を驚かせたのが、この大胆な予測でした。孫氏は、「このAGIが10年以内に実現されると強く信じている」と明言しました。この予測は、単なる希望的観測ではなく、現在のAI技術の進歩のスピードと、ソフトバンクグループが投資している最先端技術への深い洞察に基づいているのでしょう。この発言は、単に「AIが進化する」というレベルの話ではなく、「人類史の転換点」が目前に迫っていることを示唆しています。
AGIが実現すれば、世の中は根底から変わると孫氏は語ります。全ての産業、教育、私たちの人生観、社会のあり方、さらには人間関係まで、「画期的に変わる」というのです。まるでSFの世界の話のようですが、孫氏はこれを「明確な予測」として公言するのは自身が初めてではないかと述べ、その自信のほどを示しました。これは私たちが想像するよりもずっと、そしてずっと早く、未来が訪れることを意味します。心構えはできていますか？
日本はヤバい！？ 孫氏が突きつける強烈な危機感
未来への希望と期待を語る一方で、孫氏は日本の現状に対し、極めて強い危機感を表明しました。驚くべきデータが示されました。現在、GPT-4を仕事で日常的に使っている日本人は10%に満たないというのです。さらに衝撃的なのは、AIの活用を禁止している、あるいは禁止を検討している企業が72%もあるという統計調査の結果です。
これに対し、孫氏は「日本はヤバい」「自分はヤバい」と繰り返し、強い言葉で警鐘を鳴らしました。この状況を、彼は歴史上の出来事に例えています。電気が生まれたとき、あるいは自動車が生まれたときに、それらを「危険だ」「必要ない」と否定した人々と同じ過ちを、現代の日本が犯そうとしているのではないか、と。そして、歴史がその間違いを証明すると断じました。
歴史の教訓：変化を受け入れる勇気：蒸気機関や電気、自動車、インターネットなど、画期的な技術が誕生した時、必ず初期にはその危険性や不要論が唱えられました。しかし、それらの技術は社会に定着し、人類の生活を根本から変えてきました。AIもまた、その歴史の転換点にあるのかもしれません。変化を受け入れ、活用する姿勢が、未来を左右する鍵となるでしょう。
GPT-4は「知恵の相談相手」「ディベート相手」として活用せよ！
では、どのようにAIを活用すれば良いのでしょうか？ 孫氏は、GPT-4を単なる「知識を検索するツール」としてではなく、「知恵の相談相手」、特に「ディベート相手」として活用すべきだと提案しました。AIに質問を投げかけ、その答えに対してさらに深掘りする、反論する、別の視点から問いかける。このインタラクティブなプロセスを通じて、私たち自身の思考力や創造性を高めることができる、というのです。
既にGPT-4は、医師国家試験や司法試験に合格するレベルに達しており、一部のテーマでは平均的な人間を超越しているという事実が示されました。これは、AIがもはや単なる補助ツールではなく、専門的な知識と推論能力を兼ね備えた強力なパートナーになりつつあることを意味します。この「最強のパートナー」を使いこなすかどうかが、個人や企業の未来を分けることになるでしょう。
AGIがもたらす産業革命と私たちの未来
AGIは、人類の英知の総和の10倍になることで、人間と猿ほどの知能の差が生まれると孫氏は言います。そして、このAGIを拒否する人と、積極的に活用する人の間にも、そのくらいの知能の差ができてしまうと警告しました。これは、単に効率が上がるというレベルの話ではなく、知能そのものの格差が生じることを意味しています。
では、具体的にAGIはどのような変革をもたらすのでしょうか？ 孫氏は様々な産業への革命的な影響を挙げました。
- モビリティ: ほぼ事故ゼロの自動運転が実現し、移動の概念が根本から変わります。渋滞や事故、運転のストレスから解放される日も近いかもしれません。
- ロジスティクス: 不良在庫が不要な「秒単位のジャストインタイム」が実現します。サプライチェーン全体が最適化され、無駄が徹底的に排除されます。
- 生産現場: 製造ラインの最適化、品質管理の向上、故障予測など、生産性が飛躍的に向上します。
- カスタマーサービス: より人間的で個別最適なサポートが可能になります。顧客の感情やニーズを深く理解し、的確な解決策を提供できるようになるでしょう。
- 金融・投資: AGIによる高度な資産運用が可能になります。リスクを最小限に抑えつつ、最大限のリターンを追求する、まさに夢のような投資の世界が広がるかもしれません。
- 個別最適な遺伝子医療: 一人ひとりの遺伝子情報に基づいた、オーダーメイドの医療が実現します。病気の早期発見、予防、そして効果的な治療法が劇的に進化するでしょう。
孫氏は、AIの規制には賛成するものの、便利さと危険性を認識した上で、自動車のように活用すべきであり、拒否することは進化を拒否することに等しいと主張しました。新たな技術には常にリスクが伴いますが、それを恐れて活用を躊躇することは、未来を閉ざすことになってしまう、という強いメッセージです。
ソフトバンクグループの挑戦とArmの重要性
孫氏のビジョンを体現するように、ソフトバンクグループは「AIを最も活用するグループになる」という強い願望を掲げています。モバイル、LINE、Yahoo!、PayPayなど、日本で最も多くのユーザーとのタッチポイント（データ）を保有するソフトバンクグループだからこそ、AGIの世界を目指してこれらのデータを最大限に活用していくと決意を表明しました。
既に社内では強烈にAI活用が推奨されており、驚くべき成果が上がっているとのことです。コスト削減事例が多数生まれている他、社内での生成AI活用コンテストでは数ヶ月で10万件もの提案が集まり、特許出願件数も1万件を突破したと報告されました。さらに、孫氏個人も約1年で1,000件の発明を目指して特許出願に取り組んでいると述べ、その徹底したAI活用への姿勢を示しました。
AI時代を支える「Arm」の圧倒的優位性
ソフトバンクグループの中核企業であるArmは、AI時代を支える上で極めて重要な存在であると孫氏は強調しました。ArmのCPUは、データセンターから自動車、携帯電話まで、あらゆるデバイスでAIを動かす「脳」の役割を担っています。ArmのCEOであるレネ・ハース氏も登壇し、AIのワークロードがデータセンターだけでなく、デバイス側（エッジ側）でも幅広く使われている現状を紹介しました。例えば、韓国の交通管制システムなど、低消費電力で高度なAI処理を実現している事例は、Armの技術が社会のインフラを支えていることを示しています。
エッジAIとクラウドAI：AI処理は、大きく分けてデータセンターで行われる「クラウドAI」と、デバイス自体で行われる「エッジAI」があります。エッジAIは、リアルタイム性やプライバシー保護、ネットワーク負荷軽減などのメリットがあり、自動運転やスマート家電、工場での品質検査など、多岐にわたる分野での活用が期待されています。Armの技術は、このエッジAIの領域で特にその真価を発揮します。
Armの収入のほとんどがAI関連になってきている理由の一つとして、PyTorch、TensorFlow、Androidなどの主要なAIフレームワークを全てサポートしている強力なソフトウェアエコシステムがあることをハース氏は挙げました。AIのコンピューティングに必要なエネルギー消費の効率も重要であり、世界の電気の3%がクラウドで使われ、AIによってさらに増えると予想される中で、Armの省電力技術が今後ますます重要になると述べました。創業時から「ローパワー」をDNAとするArmの効率の良さは、他社が簡単に真似できるものではないと、その圧倒的な優位性を強調しました。
AGIのその先へ：ASIと人類の進化の物語
孫氏の講演は、AGIで終わりませんでした。彼は、AGIの次の段階として「ASI（Artificial Super Intelligence）」の時代が20年以内に来ると予測しました。ASIは、人類の英知の総和の「1万倍ぐらい」賢くなる知能であり、その差は人間と金魚（ニューロンの数が1万分の1）の差に匹敵すると表現しました。これは、まさに「シンギュラリティ」の到来を意味する、人類の歴史上、最も大きな転換点となるでしょう。
シンギュラリティとは？：技術的特異点とも呼ばれ、AIが人間の知能を大きく超え、技術進歩が予測不可能な速度で加速する架空の時点を指します。この時点以降は、人類の歴史や社会構造が根本的に変化すると考えられています。
このシンギュラリティが来る10年間で、個人、企業、国がどう行動するかによって、その後の100年が決まると孫氏は強く訴えかけました。小さな議論に囚われるのではなく、全体像を見て行動を起こすべきだと、熱いメッセージを投げかけます。人類の進化の根源は「願望」にあると語り、強い願望を持った人がAGIを「最強の味方」「最強のパートナー」として最大限に活用し、人類の未来を切り開くと語りました。そして、日本や若者たちに向けて、「目覚めよう」と力強く呼びかけました。
AGIが拓く「健康」の未来と共通のビジョン
講演の後半では、ハース氏がAGIがもたらす未来について、特に「健康」の領域での大きなインパクトを強調しました。個別の遺伝子解析に基づいたヘルスケアなど、AGIが非常に大きな恩恵をもたらすだろうと予測。人間の仕事を奪うのではなく、新たな仕事を生み出し、人間はAIが解決できない、より創造的なことに注力するようになるとの見解を示しました。
AGIの時代において、企業は資料作成や分析の自動化によって生産性が高まる一方、データのセキュリティと知財保護の重要性が増し、「ソブリンクラウド」が重要になるとも予測しました。自国でデータを管理し、主権を維持するクラウドの概念が、デジタル化が進む世界で一層求められるようになるでしょう。
孫氏とハース氏は、共にAGIを「最強のパートナー」として活用し、人々の夢を実現し、より幸福な社会を共に作っていきたいという、楽観的で希望に満ちたビジョンを共有しました。これは、AIが単なるツールではなく、人類の進化を加速させる「共創者」となり得る可能性を示唆しています。
まとめ：未来への扉を開く鍵は「願望」と「行動」
孫正義氏の講演は、私たちに多くの問いを投げかけました。AGIの時代が目前に迫る中、私たちはその変化を恐れることなく、積極的に受け入れ、活用していく必要があります。「日本はヤバい」という警鐘は、私たち一人ひとりが意識を変え、行動を起こすことの重要性を強く訴えかけているのです。
AGIは、私たちの知恵と力を拡張する「最強のパートナー」となり得ます。このパートナーを味方につけ、人類全体の「願望」を実現する、より幸福で豊かな未来を創造できるかどうかは、まさに今、私たちがどう選択し、どう行動するかにかかっています。孫氏とハース氏が示すように、未来は悲観するものではなく、共に創り上げていくもの。さあ、あなたもこの新しい時代へと、一歩を踏み出してみませんか？
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